ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜

「幼い頃から、親が決めた相手と結婚するものだと思っていましたし、飛高酒蔵の経営を立て直すことにも挑戦のしがいがあるので、特に問題はありません」


今は仕事中かと思うくらい淡々とした口調で、迷いや後悔はなさそうだ。

この結婚は本当にただの契約だと考えているような感じがして、ちょっと切ない気もする。


「それに、私は誰かに恋愛感情を抱いたことはありませんから」


彼の気持ちを聞いて頷いていたとき、そんな言葉が続けられて、私はぴたりと動きを止めた。

三十年生きてきた彼も、恋をしたことがないっていうの？


「そう、なんですか？　朝羽さんほどの方なら、女性が放っておかなそうですけど……」

「それは、経済力だとか地位だとか、上辺のものが目当ての人でしょう」


冷ややかに返されて怯みつつも、せっかくなので詳しく聞いてみる。


「じゃあ、お付き合いしたことは？」

「ありますよ。ですが、私の無頓着さを知ると呆れて去っていく方がほとんどでした。私から相手への愛情が湧かなかったのだから当然ですね」