ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
私はほのかに頬を染め、呆れた笑いをこぼして彼に抱きついた。

まだ一線を越えることができなくても、彼が私を愛でてくれていることはちゃんと感じているから、焦る必要はないのだ。



朝から幸せな気分でベルソレイユに向かい、仕事を始めて朝のピークを過ぎた頃、梢さんと話す大石さんの声がピンポイントで耳に飛び込んでくる。


「一ヵ月営みがないだけで“レス”って言われちゃうのねぇ。ただでさえ日本人は淡泊なのに」


この内容はもしや……と気になった私は、発注業務をしているふたりに近づき、さりげなく加わってみる。


「なんの話ですか?」

「深夜にやってる、一条朱華が出てるドラマよ。セックスレス夫婦の話なんだって」


梢さんが教えてくれて、やっぱりセックスレスの話かと納得しつつも、朱華さんがドラマに出ていたことは知らなかったため、「へぇ~」と頷いた。

そういえば、朱華さんのことがすっかり頭から抜けてしまっていた。でも両想いになれたことだし、特に問題もないし、あえて掘り下げる必要はないよね。

頭の片隅で考えていると、ドラマにハマっているらしい大石さんが不満そうに言う。

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