ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
タブレットからこちらに視線を向け、頼もしい言葉をくれる彼女のおかげで、心強くなる私は「お願いします」と言ってはにかんだ。

話が一段落ついて、品出しをするためにスタッフルームに向かおうとしたとき、商品を整理しながら大石さんがなにげなく言う。


「でも初音ちゃんたちは、きっと不仲だとかレスだとかいう悩みとは無縁でしょう。相手はあの霞さんだもの、いつまでも仲良くできるわよ。オメデタもそう遠くないだろうし」


にんまりして「若いっていいわね~」と独り言をこぼす彼女だけれど、私は少々胸がチクリとした。

今の調子だと、オメデタはいつになることやらって感じなんですよ、大石さん……。それ以前に、まだ一度もそういう経験をしていないのでね……。

最近の小さな悩みを思い出し、複雑な気分になっていると、梢さんが冷ややかにツッコむ。


「大石さんセクハラー」

「え、嘘っ!? そんなつもりじゃないのよ、ごめんね!」


慌てて私に謝る大石さんに、「いえいえ、大丈夫ですよ!」と笑って、首と手を振った。

まさにこのことを相談したくなるけれど、ふたりに話すとなると、私たちの詳しい事情を一から説明しなければいけない。

もっと赤裸々に相談できる相手となれば、やっぱり……。


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