ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
どうやら彼は、彼女がいたことはあるものの本気で好きになれなかった、ということらしい。

容姿も完璧で、しかも御曹司となると、彼の内面以外に惹かれる女性もたくさんいるだろう。上辺の魅力だけに寄ってこられるというのも切ないものがある。

ちょっぴり同情していたものの、ふと思い当たって私は口の端を引きつらせる。


「今気づきましたけど、私なんてモロに経済力目当てですよね……。なんか、すみません」


だって、経済的支援を得るための政略結婚なのだから。私も彼に愛されることのなかった女性たちと同類じゃない?

なんとなく後ろめたい気持ちになり、身を縮めて謝ると、彼がふっと息を漏らす。


「言われてみれば、確かにね」


視線を上げれば、意外にも小さく笑う朝羽さんがいた。

あ、笑った……。

初めてかいま見た、温かく柔らかな表情。その破壊力は想像以上だ。胸が苦しくなるくらい。

目が離せなくなる私に、彼は長く綺麗な指を湯呑に伸ばしながら続ける。


「でも、この結婚はあなたが望んだことではないでしょう。初音さんこそ、心に想う方がいるのでは?」


笑みは淡雪のように一瞬で消えてしまったものの、湯呑を口に近づける姿さえも優美な彼にそう問われ、私は苦笑する。

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