ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
◇心揺るがす密か事
契りを結んだ日から、私たちの関係は一気に蜜月と化した。
毎晩とはいかなくとも、時間と体力さえあれば、お互いを求め合う甘い夜を過ごしている。
普段はクールで寡黙な彼が、私を組み敷いているときだけは色欲を隠すことなく、まるで獣のように攻め立てるのだ。このギャップが、私をたまらなくドキドキさせる。
今夜も愛情をたっぷり注がれたあと、ベッドでふたり寄り添って、甘く気怠い余韻に浸っていた。
腕枕をしてくれている朝羽さんが、ふいに口を開く。
「近いうちに、初音に会わせたい人がいるんだ」
「誰?」
「俺の祖父。婚約を報告したときから会いたがっててね」
そういえば、朝羽さんのお祖父様にはまだお目にかかれていないのだった。
お祖母様はだいぶ前に亡くなったそうで、お祖父様もあまり身体の具合がよろしくないのだと聞いている。
「入院してると言ってた、お祖父さん?」
「あぁ、最近は調子がいいらしい。と言っても、緩和ケア病棟で終末期医療を受けているから、そう長くはないが」
彼の淡々とした口調にはかすかなやりきれなさが滲んでいて、私も切なくなった。