ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
でも、死と向かい合っているとはいえ、最期まで自分らしく生きるために緩和ケアをしているのだから、今悲観するのは失礼かもしれない。

伏し目がちになって考えていると、朝羽さんの手が私の髪を滑る。


「大切な人に、大切な人を会わせるって、素敵なことだけどなんだかむず痒いな」


ぽつりとこぼされた言葉は、人肌のような温度を持っているように感じ、私はとてもほっこりしながら微笑んだ。


「私もぜひお会いしたいです。少しはお祖父さんの気力に繋がるといいな」


朝羽さんと、彼の大切な人の力になりたい。

私の力なんて微々たるものだとしても、そんな大層なことを願う。この思いを積み重ねれば、家族になれるような気がする。


「……初音は、俺にいろんなものを与えてくれてるよ。愛しい気持ちとか、癒しとか、新しい夢までもらった」


嬉しい言葉の最後が気になり、素肌の胸にくっつけていた頬を離し、彼の顔を見やる。


「夢って?」

「もう少し形になってからのお楽しみ」


含みのある笑みを口元に浮かべた彼は、キョトンとしたままの私の頭に手を伸ばし、自身の唇へと引き寄せた。

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