ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「実は私も、これまで恋をしたことがないんです」


経験がないことに少し劣等感みたいなものを感じていたけれど、朝羽さんの恋愛事情を聞いたことで、あっさりと告白できた。

ピクリと反応を示した彼に再び見つめられる中、正直に打ち明ける。


「いいなって思う人はいても、それ以上の感情が湧いてこなかったというか。さっき母が言っていた通り、私は昔から女の子らしいことをしてこなくて、男子から異性として見られたこともなかったと思います。お店の手伝いをしてても来るのはおじさんばかりで、出会いもありませんでした」


軽く笑ってみても、やっぱり虚しくなるな……。出会いはおろか、若い人の日本酒離れを実感しただけだったんだから。

しかし、私が切実に望むのは、実は彼氏を作ることより一歩も二歩も先のことなのだ。


「それなのに、結婚願望はすごくありました。というか、最悪結婚できなくてもいいから、子供だけは欲しい!と思ってて」


正座する脚の上に置いていた手を思わずグーにして、力強く言い放った。着物姿で拳を握る私は、どこぞの演歌歌手かとつっこみたくなる。

< 17 / 273 >

この作品をシェア

pagetop