ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
お義父様もとても困っているであろうことが、声色から伝わってくる。


「結納のことだけではありませんよ。霞浦の面子もありますし、飛高さんには地方でのリゾート開発で世話になった恩もある」

「恩は金で返せばいい。相手方の家業の経営も回復の兆しが見えているようだが、もしもまだ援助が必要だと言うなら、こちらも金を出してやる。それなら文句はあるまい」

「……なぜ、そこまでして朝羽と結婚させたいんです?」


戸惑いと怪訝さを露わにした、お義父様の声が投げかけられた。まったく同じことを思った私も、引き続きしっかり耳を澄ませる。


「朱華のスキャンダルの多さには困っているんだよ。どこの馬の骨かわからない男に入れ込んでやしないかと気が気じゃない。それに、不動産のビジネスにも悪影響が及び始めている。いっそのこと身を固めさせようと思ってな」


ため息混じりに話す一条社長は、本当に頭を悩まされているように感じる。

だからって、どうして朝羽さんを選んだのだろうか。まだ籍は入れていなくても、私たちは夫婦同然なのに。

でも、籍を入れていないということが、一番の弱みなのだ。込み上げる憤りや、やりきれなさを必死に抑える胸が苦しい。

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