ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
私たちは愛し合っています。出会ってから日は浅くても、本当の愛を知ることができたんです。

……そう、声を大にして宣言したいけれど、寸でのところでためらってしまう。

だって、その愛がどれだけの強さを誇るのか、誘惑を前にしても揺らぐことはないか、まだわからないから。

私の想いは変わらないと言い切れるけれど、朝羽さんにとっては泡沫の感情かもしれない。

それに、愛だけではどうにもならないこともある。彼にとって相応しい家柄がどちらかは明白だ。

愛しているからこそ、私は彼のために身を引いたほうがいいのだろうか──。

もうふたりの会話は耳に入ってこなくて、物音を立てないようにその場を離れた。騒がしい蝉時雨のように、酷くざわめく胸を押さえながら。



パーティーは、お茶やお菓子をいただいたあと、午後四時前にお開きとなった。

お手洗いから戻った私に、朝羽さんは心なしか心配そうな顔をして、「あまり顔色がよくないように見えるが、大丈夫か?」と声をかけてくれた。

泣きたくなって、その場ですぐに抱きつきたい衝動に駆られたものの、なんとか堪えて必死に笑顔で取り繕った。

< 179 / 273 >

この作品をシェア

pagetop