ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
感心した調子で口にされた彼女の言葉は素直に嬉しくて、私も笑みがこぼれた。

あれからたまに朝羽さんに英語を教えてもらっていて、以前ほどオドオドしてしまうことはなくなったと私自身も感じていたのだけど、人から言われるとますます嬉しい。

気分よくレジカウンターの中の備品の整理をしていると、その向かい側で梢さんが思い出したように尋ねる。


「そういえば、籍は式と同時に入れるって言ってたけど、それってふたりのこだわりかなにかなの?」


密かに悩んでいる入籍のことに触れられ、胸がざわめく。しかし、それは表に出さず、平静に振る舞う。


「いえ、私の実家がある地域では、昔からそれが一般的なんです。古いしきたりが根づいちゃってるところなので」

「じゃあ、霞さんが合わせてくれてる感じなんだ。なるほどね〜」


私の地元の地域性について理解した彼女は、納得して頷いた。

この昔ながらの習慣というものは、なかなか面倒だったりする。子供の頃からやたら行事が多かったし、これに忠実な両親のおかげで、いまだに入籍できていないし。

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