ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
……暗闇の中、ふと物音に気づいて意識が浮上してきた。
軽やかなメロディーと、衣擦れの音。人が動く気配。それらを感じ取って、うっすら瞼を開ける。
次第に真っ暗な視界に慣れてきて、ぼんやりと部屋の中を見回した。
「……朝羽さん?」
隣に、彼の姿がない。シーツにはまだ温もりが残っているから、つい今し方までいた証拠だ。
ぼうっとしたまま不思議に思っていると、部屋の外からなにやら話し声が聞こえてくる。さっき着信のような音もした気がするし、誰かと電話しているのだろうか。
ベッドサイドテーブルに置いたスマホをつけてみると、深夜一時を回ったところ。こんな時間に誰と……?
なんだか胸騒ぎがする。だいぶ脳がクリアになってきた私は、静かにベッドを抜け出してドアのほうに向かった。
そっとドアを開け、明かりがついているリビングのほうからする声に耳を澄ませる。小声で話していても、かろうじて聞き取れた。
「大丈夫か? 朱華のことだから心配だ」
……と、砕けた雰囲気を漂わせつつ、彼女を気遣うようなひとことが。
電話の相手は朱華さんだとわかり、ごくりと息を呑む。