ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
ほとんど眠れずに、朝を迎えた。
ありがたいことに、私は今日休みだ。寝不足と、泣き腫らしたせいで酷いことになっている顔を、スタッフの皆やお客様にさらさないで済む。
朝羽さんにはこの顔を見せないわけにいかないけれど、気まずいこともあって、極力顔を見合わせないようにしている。
しかし、一晩憂悶としている間に思い立ったことがあるので、それは伝えておかなければ。
「私、今日実家に帰ります」
朝食をとりながら、ダイニングテーブルの正面に座る朝羽さんに告げた。
今日は、ひとりでこの部屋にいたくない。一日だけでも日常から離れて、地元で心を休めたくなったのだ。
彼は目線を手元に落とす私を、キョトンとして見つめる。
「どうした、急に。あぁでも、これから式の準備で忙しくなるし、今のうちにご両親に会っておいたほうがいいかもな」
納得したらしい彼だけれど、私は今の言葉にピクリと反応して、箸を止める。
「……式、待ったほうがいいんじゃないですかね」
目線を落としたまま、思わず本音をぽつりとこぼした。
顔を見なくても、私と同様に動きを止めた彼が、今怪訝な表情をしているであろうことはわかる。