ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
指輪で繋ぎ止めておいたほうがいいのは、私じゃなく朝羽さんだったんじゃないかな……。

そんなふうに思う私は、結局は彼の幸せではなく、自分の幸せを一番に考えているような気がしてならない。自分の中に潜んでいた醜さが露わになったかのよう。

どんどん思考もネガティブに陥り、情けなくて涙がこぼれた。

口元にあてた指輪が、塩辛い雫で濡れていく中、頭には祖母の日記が浮かぶ。


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 あなたが遠い地で、奥様と仲睦まじく暮らしているということを、風の噂で耳にしました。

 寂しさも、後悔も、心憂く思いはまったくありません。
 あなたが幸せならば、私も心から幸せなのです。

 私たちが別離を選んだことは、正しかったのだと思います。

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祖母は、愛した人が別の人と生きていくことを、少しも妬ましく思わなかったのだろうか。

どうしたら、祖母のように純粋に、好きな人の幸せを願えるのだろう。

この期に及んで、朝羽さんを手放したくないと強く思っている自分に嫌気が差し、私はひとり肩を落としていた。




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