ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
しかし、その日から数日、初音はどことなく元気がなさそうだ。最初は俺の気のせいだと思っていたが、浮かない表情をしているときが多くなっていると確かに感じる。
……まさか、一条社長の件について知ってしまったのだろうか。初音があの話を耳にする機会なんてないはずだが、他に思い当たる節がない。
よくよく考えてみると、ホームパーティーで彼女がトイレに行ったとき、父たちも姿が見えなかったことを思い出した。あのとき、なんらかの偶然で彼女が聞いてしまったという可能性もあり得る。
もしそうだとすれば、なおさら早くこのことは解決させたい。それなのに、一条社長と会う都合がつかずにいる。
初音に冗談半分で言ったように籍を入れてしまえばいいとも思うが、勝手にそうして社長の機嫌を損ねてしまえば、霞浦グループの今後の取引に悪影響が出かねない。
やはり、話す機会が持てるまで待つしかないか……。
頭を悩ませていたその日の深夜、眠っていた俺は着信音とバイブの振動でぱっと目を開いた。
いつもは目覚まし四個か、初音に起こしてもらわないとダメなのに、すぐに気づいた自分に驚く。