ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
眠気を堪えてスマホを確認すると、電話の相手は、いろいろな意味でお騒がせ女優の朱華だ。

彼女の仕事は不規則なので、ごくたまに非常識な時間にかけてくることがある。おそらく、俺が怒ることはあまりないから、甘えられてしまっているのだろう。

隣で寝ている初音を起こさないよう、寝室を出た。リビングの電気をつけ、ぼうっとしたままスマホを耳に当てる。


「…………はい」

『あ、寝てた?』

「当たり前だろう……」


あくびを交えて言うと、悪気のなさそうな『ごめーん』と謝る声がした。天真爛漫な朱華は、だいたいこんな調子だ。

父たちの仕事の関係で、昔から知り合いだった俺たちは、たまに両親を交えて食事をしたり、連絡を取り合ったりする仲だった。

付き合いが長く、慣れてしまっているせいか、振り回されても憎めず、面倒な妹のように思っている。そして彼女も、俺のことをいつも素っ気ない兄のように思っているだろう。

お互いに気を遣わずに接することができる間柄ではあるが、そこに恋愛感情は一度も生まれたことがない。親戚のような感覚なのだ。

そんな朱華の明るい話し声で、だんだんと眠気が覚めてくる。

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