ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
戸惑っている間にすぐそばに来た彼はスッとしゃがみ、宙ぶらりんになっていた私の手に自らのそれを伸ばしてきた。

突然距離が縮まったことと、なぜか手を取られたことにドキッとして肩が跳ねる。

動揺するもされるがままの私の手を見下ろし、彼はひとこと呟く。


「痛そうですね」


これまでの話となんら関係ないことを言われ、キョトンとしつつ思い出した。ひび割れやあかぎれで酷い状態になっていることを。

今の時期、寒い蔵の中で瓶詰め作業や洗い物を手伝っていると、すぐに手が荒れてしまってなかなか治らないのだ。

全部の指に絆創膏を貼りたいくらいの荒れっぷりを見られてしまい、恥ずかしくなる。せっかく綺麗に着飾っているのに、手だけ気を抜いているのがバレバレじゃない。

今すぐ手を引っ込めたい気持ちになり、観察するように眺めている朝羽さんを慌てて制する。


「あ、あんまり見ないでください……! 荒れまくってて汚いので」

「どこが? あなたが毎日精一杯働いている証でしょう。とても綺麗ですよ」


温かく骨張った手で、私のそれを労るようにそっと撫でながら、彼は“当たり前”というような調子で思いがけない言葉をくれた。

こんなにボロボロな手を、そんなふうに言ってくれるなんて。

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