ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
『もっと早く電話するつもりだったんだけど、撮影が長引いちゃって。とにかく話したかったの、パパの件で』

「あぁ……それは俺も話そうと思ってた。なんで『朝羽だったら考える』なんて言ったんだ?」


朱華は俺が婚約したことを前から知っていた。それに、彼女にはちゃんとした恋人がいる。

にもかかわらず、なぜ俺を引き合いに出したりしたのか、一条社長の話を聞いたときから疑問に思っていた。

すると、彼女は呆れたような、トゲのある口調で話し出す。


『だって、私には心に決めた人がいるっていうのに、結婚しろってうるさいから。朝羽なら婚約してるし、パパもさすがに諦めると思ったのよ。それがまさか、本気で婚約破棄させようとするなんて!』


声を荒らげ、憤慨する朱華。どうやら彼女なりの反抗だったらしいことがわかり、納得した俺は「そういうことか」と独り言をこぼした。


『本当にごめんね! あのバカ親父、そこまで朝羽のことを気に入ってるとは……。私のことだって、もっと信じてほしいのに。週刊誌のゴシップなんてほとんどデタラメなんだから』


彼女は口を尖らせ、ため息を吐き出した。

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