ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
男性がレストルームのほうへ歩いていき、なにげなくこちらを向いた女性も、俺に気づいてぱっと表情を明るくした。


「あ、霞浦さん!」


愛嬌のある笑顔でこちらに近づく女性に、俺も微笑んで一礼する。


「こんにちは、大崎(おおさき)様。もうすぐ結婚式ですね。今日もお打ち合わせですか?」

「そうなんです。もう今からそわそわしちゃいますね~」


大崎さんはとても幸せそうに、ふわふわとした長い髪を揺らして小首を傾げた。

ふたりは来月、このベアティチュードで式を挙げることになっている。その関係で以前挨拶をしたのだが、俺たちの繋がりはそれだけではない。


「この前、霞浦さんがオススメしてくださった飛高酒蔵さんの日本酒、父もとても気に入ってくれて、おかげで仲直りできたんです。今日も買っていこうと思ってて」


嬉しそうに話す彼女は、以前初音がしたベルソレイユにやって来たカップルの話に登場した女性。父親とうまくいっていない彼女というのが、この大崎さんのことなのだ。

実は、俺は初音より先に大崎さんの事情を知っていて、飛高酒蔵の酒を薦めておいたのだが、初音はまだこのことを知らない。

どうやら無事仲直りできたようだし、伝えたらきっと喜ぶだろう。

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