ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
ふふっと笑う大崎さんの言葉で、俺の脳内は愛おしい彼女で埋め尽くされ、強張っていた心が徐々にほぐれていく。

俺も、初音のそういうところが好きだ。温かみのある考え方ができて、常に誠意を込めて相手を思いやるところが。


「……私もそう思います」


穏やかな表情でそう呟くと、大崎さんは「えっ?」と首を傾げる。ちょうどそこへご主人が戻ってきて、話は打ち切られた。

彼にも軽く挨拶をしてから、レストランに入っていくふたりを見送った。そして俺は、中華料理店の状況を確認しに向かう。


不思議なことに、あれだけ重苦しかったのが嘘のように靄が晴れ、頭の中がクリアになってくる感覚がした。

俺はどう足掻いても、初音のことが好きで、彼女をれっきとした妻にしたいという思いは変わらない。

ならば、それを真摯に伝え続けるしかないんじゃないだろうか。

落ち込んでいる場合ではない。彼女の気持ちが離れてしまいそうなら、なんとしてでも繋ぎ留めなければ。

一条社長をどう説得するかも、大崎さんと話したことでいい案が浮かんだ。彼の気を変えられる確証はないが、賭けてみたい。

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