ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
◆心深き友はかく語りき
家事を済ませたあと、必要最低限の荷物を用意して、泣いて酷い顔をメイクでなんとかごまかし、早々とマンションを出た。
今日はゴールデンウィークも過ぎた平日だから、新幹線もそこまで混雑はしていないだろう。今からだとお昼くらいには着けそうだ。
突然帰ってきたら皆びっくりするだろうな、と考えながら駅に向かって歩いていたとき、私の横の道路脇に一台の普通車がゆっくり停まる。
そちらを向き、下がるウインドウの向こうに現れた顔を見て、私は目を丸くした。
「えっ、大和さん!?」
「やっぱり初音さんだ。お久しぶりです」
緩くうねるミディアムヘアと、口元の髭がセクシーさを醸し出す彼は、微笑んで会釈した。
びっくりした、まさかこんな道端で大和さんに会うなんて! というか、よく私だって気づいたな。
驚く私に、大和さんはとってもフレンドリーな調子で問いかけてくる。
「どこ行くんですか?」
「駅です。実家に帰ろうと思って」
「そっか。じゃあ乗って。送ってあげますよ」
さらりと予想外のお誘いをされ、私は「えっ!?」とすっとんきょうな声を上げた。
まだ会って二回目なのに車に乗せてもらうなんて、ちょっと図々しい気がする。