ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
霜花とは、寒い冬の朝に窓ガラスにできる氷の花模様。冷たそうでいて美しいそれを見つけたとき、私はいつも小さな感動を与えられる。

無愛想でクールな印象が強い彼もそう。時折見せる微笑みや、ふいにかけられる紳士的で胸を打つ言葉に、惹きつけられる。

見てくれだけじゃない美麗さを感じるのだ。きっと、心も綺麗なはず。

こんな彼に本気で好きになってもらえたら、女性は皆幸せになれるんじゃないだろうか。


「初音さんとなら、今まで疎かにしていたその努力をするのもいいかもしれません」


思いを巡らせていたとき、朝羽さんが穏やかな声でそう口にしたため、はっとした。

そして、私の手を両手で包み込むように重ね、しっかりと視線を絡ませる。


「私と、結婚してくださいますか?」


──ドキン、と喜ぶように心臓が跳ね上がった。

これは政略結婚で、私たちは愛し合っているわけではない。それでも、きちんとプロポーズしてくれたことが純粋に嬉しくて、胸の奥が熱くなる。

改めて結婚する決意を固め、重ねた手をきゅっと握る。


「よろしくお願いします……!」


彼となら、本当に恋ができるかもしれない。ひとりでするものじゃなく、ふたりでする恋を。

根拠のない予感と期待を抱き、私は近い将来の旦那様に深く頭を下げた。




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