ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「それは、やっぱり大切な人なんじゃねーか?」


彼なりの率直な意見に私も頷いたものの、兄は「でも」と続ける。


「それって結構難しいじゃん。自分に余裕がないと、人の幸せってなかなか願えないものだと思うんだよ」


おバカ発言が多い兄にしては、今の私の現状を見事に当てている。思わず真顔になってしまった。


「だから、大切な人を幸せにするために、自分も幸せになる。これがベストだな」


ニッと口角を上げる彼の言葉で、いくらか気持ちが軽くなり、私もふっと笑みがこぼれた。

自分も幸せになる、か。確かに、それが一番であるに違いない。


「しろちゃんらしいね」

「ほんと、シローさんらしいアホな回答」

「あぁん?」


黙って聞いていた真琴が、いつもの冷静さで口を挟み、兄はギュッと眉根を寄せる。

彼女は兄の睨みなどものともせず、私の心情を代弁してくれる。


「自分の幸せを取ったら、大切な人が幸せになれないんじゃないか、って初音は心配してんのよ。ねぇ?」

「そ、その通りです」


すごい、やっぱり真琴は全部見抜いていらっしゃる。

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