ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
厳しくも的確な言葉が、胸に突き刺さる。でも痛みは一瞬で、ワクチンのように自分の中に取り込まれていくのを感じた。

真琴の言う通りだ。私は自分が傷つくのが怖くて、逃げていただけ。にもかかわらず、彼の幸せを優先したいだなんて、生意気にもほどがある。

私がするべきことは、怖がらずにしっかり朝羽さんの話を聞いて、受け入れることだったのだ。

こんな簡単なことがわからなくなっていた自分に呆れる。

愚かさを理解して、なんだか憑き物が落ちたみたいに肩の力が抜け、一気に涙が溢れてきた。

兄は「泣かしたー」と言って、真琴にじとっとした視線を送っている。彼女は睨み返し、嗚咽を漏らす私のそばにやってくる。


「っ……私、ほんとバカ……」

「あんた、これが初恋なんでしょ? 恋に恋してる状態になるのも仕方ないって。ひとつ勉強したと思って、元気出しな」


ぽんぽんと優しく背中を叩いてくれる真琴の手が温かい。さっぱりとした励ましにも救われる。

多くを語っていないのに、私が抱える問題点を見抜いてしまう彼女には、本当に感服する。

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