ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
カーペットの上に座り、厚みのある表紙をめくろうとした、そのとき。
「……ん、電話?」
バッグの中で着信音が鳴っていることに気づき、日記をテーブルに置いてスマホを取り出した。ディスプレイに表示された名前を見て、心臓が揺れ動く。
朝羽さん、だ。
話したいと思っていたけど、帰ってからのつもりでいたから緊張してしまう。というか、彼は仕事中なのになんの用事だろう。
早くなる鼓動を宥めつつ、とりあえず通話ボタンを押す。
「……もしもし」
『初音』
名前を呼ぶ、低く優しい声色が鼓膜を揺らした瞬間、心の奥から熱いなにかが込み上げる感覚がした。
あぁ、私はやっぱりこの人が大好きだ。そう実感して、胸がきゅうっと縮まる。
『ここのところ、悩ませてすまなかった』
「いえ……! 私のほうこそ、ごめんなさい」
朝羽さん、私が悩んでいることに気づいていたの?と意外に思いつつ、私は無意識に首を横に振り、ぺこりと頭を下げて謝った。
ちょっぴり気まずくもあり、仲直りの兆しが見えそうでもある。ぎこちなさが残る私たちの中に、新緑の間を抜けてきた心地よい薫風(くんぷう)が吹き込んだようだった。
「……ん、電話?」
バッグの中で着信音が鳴っていることに気づき、日記をテーブルに置いてスマホを取り出した。ディスプレイに表示された名前を見て、心臓が揺れ動く。
朝羽さん、だ。
話したいと思っていたけど、帰ってからのつもりでいたから緊張してしまう。というか、彼は仕事中なのになんの用事だろう。
早くなる鼓動を宥めつつ、とりあえず通話ボタンを押す。
「……もしもし」
『初音』
名前を呼ぶ、低く優しい声色が鼓膜を揺らした瞬間、心の奥から熱いなにかが込み上げる感覚がした。
あぁ、私はやっぱりこの人が大好きだ。そう実感して、胸がきゅうっと縮まる。
『ここのところ、悩ませてすまなかった』
「いえ……! 私のほうこそ、ごめんなさい」
朝羽さん、私が悩んでいることに気づいていたの?と意外に思いつつ、私は無意識に首を横に振り、ぺこりと頭を下げて謝った。
ちょっぴり気まずくもあり、仲直りの兆しが見えそうでもある。ぎこちなさが残る私たちの中に、新緑の間を抜けてきた心地よい薫風(くんぷう)が吹き込んだようだった。