ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
◇君が居てこそ幸ひなり
ちょうどいい新幹線の時間まで、家族や真琴と談笑したり、店や酒蔵の様子を見たりして過ごした。
もちろん、朝羽さんに頼まれた日本酒を買うのも忘れずに。
心休まる実家で皆と話したことで、だいぶ気持ちがスッキリした。自分のダメなところも見つめ直せたし、やっぱり帰ってきてよかったと思う。
皆にさよならをして新幹線に乗り込むと、窓から黄昏の街並みを眺める。大好きな地元とも、またしばしのお別れだ。
そして、先ほど読むのを中断してしまったため持ってきた祖母の日記を開き、じっくりと目を通し始めた。
東京駅に着く頃には、辺りは薄暗くなっていて、駅構内も帰宅ラッシュで混み合っていた。
改札を抜け、その人混みの中をキョロキョロと見回す。朝羽さんが、『できる限り早く仕事を切り上げて待っている』と言ってくれていたから。
その彼の姿を見つけるのは、さほど難しくなかった。
スマートなスーツ姿、長めの前髪を流したセクシーな黒髪、目を奪われる美麗な顔立ち。私には、彼を形作るすべてが一際輝いて見える。
心ごと引き寄せられるように、私は彼だけを見つめて一直線に駆け寄った。