ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
“娘の幸せを願っているが、素直になれない父親”というのは、一条社長のことだったらしい。これを買ってくるように頼んだ目的は、彼のご機嫌取りのためだったのか。

それにしても、朱華さんも一緒だなんて、いろいろな意味で緊張する。修羅場になったりしないよね……。

胸をざわめかせながらも、「わかりました」と返事をした。朝羽さんは、前を見据えたまま確認する。


「初音も、俺が婚約破棄をしないかと迫られていることは知ってたんだな?」


やはり、彼は気づいていたらしい。はっきり確認され、私も正直に「はい」と頷いた。


「不安にさせたくなくて、黙っていて悪かった。でも、ここできっぱり断る」


力強く断言する朝羽さんに目を向ける。

私を選んでくれて、素直に嬉しい。彼の気持ちも、本物だと信じられる。でも、本当にそれで後悔しないだろうか。


「……いいんですか? 協力してもらえるチャンスを捨てても」

「どれが必要なチャンスか、俺はちゃんと見極められるよ。今回は不必要だと、最初から判断していた」


あっさりとそう言った彼は、わずかに憂いを帯びた目線をこちらに移す。

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