ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「それより、初音を失うことのほうが何倍も辛い」
──ぎゅうっと、胸が締めつけられた。見えない腕で、力強く抱きしめられたみたいに。
なんだか感極まって唇を噛みしめ、俯く私の火照る頬に、彼の左手がそっと触れる。
「全部片づいたら、あなたを目一杯愛するから。もう少しだけ、待っていて」
闇夜に淡く輝く月のような、甘く優しく、少し妖艶な声色が耳に流れ込んできて、私はたまらなくもどかしい気分になるのだった。
そのあと、昨夜の朱華さんとの電話はすべて私の誤解だということがわかり、はやとちりしてしまった自分に落胆した。
それもつかの間、わずか五分ほどで目的地に到着。お見合いをしたときのような高級料亭だ。今日の服装が、たまたま上品なワンピースでよかった。
着物姿の女将さんの案内についていくと、障子の向こうの個室でなにやら言い合っている声が聞こえてくる。
「どうして反対ばっかりするのよ!? 彼のこと、よく知ろうともしないで!」
「バーテンダーなんて、酒と会話で客の機嫌をとるホストみたいなもんだろう」
「全っ然違うから! あー今の偏見発言、録音しておけばよかった」
これは、もしかしなくても一条社長と朱華さん?
──ぎゅうっと、胸が締めつけられた。見えない腕で、力強く抱きしめられたみたいに。
なんだか感極まって唇を噛みしめ、俯く私の火照る頬に、彼の左手がそっと触れる。
「全部片づいたら、あなたを目一杯愛するから。もう少しだけ、待っていて」
闇夜に淡く輝く月のような、甘く優しく、少し妖艶な声色が耳に流れ込んできて、私はたまらなくもどかしい気分になるのだった。
そのあと、昨夜の朱華さんとの電話はすべて私の誤解だということがわかり、はやとちりしてしまった自分に落胆した。
それもつかの間、わずか五分ほどで目的地に到着。お見合いをしたときのような高級料亭だ。今日の服装が、たまたま上品なワンピースでよかった。
着物姿の女将さんの案内についていくと、障子の向こうの個室でなにやら言い合っている声が聞こえてくる。
「どうして反対ばっかりするのよ!? 彼のこと、よく知ろうともしないで!」
「バーテンダーなんて、酒と会話で客の機嫌をとるホストみたいなもんだろう」
「全っ然違うから! あー今の偏見発言、録音しておけばよかった」
これは、もしかしなくても一条社長と朱華さん?