ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「……なんか、騒がしいですね」

「やっぱり揉めてたか」


小声で言うと、朝羽さんはやれやれ、といった調子でため息混じりに呟いた。そして、彼らの代わりに女将さんに謝ったあと、私に耳打ちする。


「実は、朱華が恋人を連れてくると言ってたんだ。この機会に、社長に会わせて交際を認めてもらうって」

「え、そうだったんですか!?」


朱華さんって、本当に恋人がいたんだ。しかもさっき、バーテンダーがどうのって言っていたよね。

週刊誌で彼女が噂されていた、“某高級ホテル関係者”っていうのは朝羽さんではなく、まさか……!

私が知っているバーテンダーはひとりだけなので、どうしても彼が思い浮かんでしまう。

勝手に予想して、口元を手で覆っていると、聞き覚えがある声が響いてくる。


「お義父さん、僕は誠実です。朱華さんを悲しませるようなことは決してしませんよ」

「自分で自分を誠実だと言うやつほど信じられ……というか、私は君の父親になった覚えはない!」


どこかで聞いたセリフが飛び出し、私はつい吹き出しそうになってしまった。

そんな私をよそに、朝羽さんが障子を開ける。騒がしかった中が一瞬静まり、こちらに皆の視線が集中する。

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