ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
しかし、それをものともせず反論するのは、ムスッとしたままの朱華さんだ。


「あのねぇ、朝羽はそんなことはどうでもいいのよ。大事なのはお金ばっかりじゃないんだから」

「そんなのは綺麗事だ。お前は世間知らずにもほどがある」

「なんですって~!?」


またしてもバトルが始まりそうになり、私はひとりあたふたしてしまう。そのとき、朝羽さんが「一条社長」と呼び、ふたりの言い合いを中断させた。

ひとまず黙った社長を、朝羽さんは凛とした表情で見つめて告げる。


「どれだけいい条件をいただいても、初音がいなければ意味がないのです。私が目指すレストランは、彼女がいてこそ成り立つものなので」


私がいてこそ成り立つ?

それはどういうことなのか、真意を計ろうとして隣を向いた。


「私の夢は、飛高酒蔵の日本酒に合った料理を考案し提供する、日本で唯一の店を作ることです」


次いで語られたのは、予想外の事実。私は、彼の横顔を映す目を丸くすることしかできない。

朝羽さん、飛高酒蔵を主役にしたレストランを作ろうとしていたの? 私たちの店を守って、さらに繁盛させるために……?

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