ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
『初音は俺にいろんなものを与えてくれてるよ。愛しい気持ちとか、癒しとか、新しい夢までもらった』


以前、朝羽さんが言っていたこの言葉の意味を今やっと理解し、彼の思いも初めて知って、心の奥から熱いものが込み上げた。

意表を突かれたような顔をする一条社長に、朝羽さんはこうつけ足す。


「料理以上に、日本酒を楽しむための店にしたいと考えています。初音なら、お客様にぴったりの酒を選ぶことができる。好みや味の希望に合わせるだけでなく、その人の心情に寄り添って選ぶことも」


そんなことを言われたのは初めてで、私はぽかんとしてしまう。

好みや味で日本酒を勧めることは当たり前にしていても、人の心情に寄り添うなんて大層なことをしていた自覚はない。

ただ、どんなときに飲むつもりで買おうとしているのかとか、贈り物なら、この人はどんな気持ちを込めて贈ろうとしているのかとか、そういった部分は自然と読み取ってアドバイスするようになっていたけれど。

朝羽さんは、私の些細な心がけを見ていて、仕事の面でも認めてくれていたのか……。

密かに感激していると、彼はこちらにすっと目線を向け、ふわりと微笑む。

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