ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「“さきはひ”というのは、“幸い”の古語です。花が咲くの“咲き”と、地を這うことの“這ひ”。辺り一面に花が開き実を結んで、根が地を這って広がるように、人々に心地よさや収穫の喜びをもたらす状態を、こう呼んだのだそうです」


このお酒で喜びを感じてほしい。そんな願いを込めて、情緒溢れる大和言葉で名づけた。

すると、朱華さんが納得したように頷き、私に微笑みかけてくれる。


「そんな言葉があったのね。確かに、綺麗な花を見るだけで気分がよくなるわ」

「はい。そういう気持ちって、伝播するものだと思うんです。例えば、大切な人の幸せな姿を見ると、自分も幸せを感じることができますよね」


朱華さんから一条社長へと目線を移し、今回の件で自分が感じたことを正直に伝える。


「私は、朝羽さんが幸せであるためには、自分が身を引いたほうがいいのではないかと悩んでいました。今、社長も朱華さんのためにと、交際を反対していらっしゃるのだと思います。でも、その人が幸せかどうかは、本人にしかわかりません」


神妙な顔で私と視線を合わせた社長に、「今日、私も親友に教えられたんですけどね」と補足し、苦笑を漏らした。

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