ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
恐ろしいことを言っているけれど、今この場にいる皆の表情が、みるみる明るくなっていく。ふたりの交際を認めてくれたのだから。

よかった……気持ちを変えてくれたみたい。

朝羽さんに目をやると、彼は“よくできました”とでも言うように、優しく微笑んでくれた。

朱華さんは驚きと共にじーんとした様子で、「パパ……」と呟く。大和さんも、安堵と喜びが混ざったような笑顔を浮かべ、しっかりと返事をする。


「肝に銘じておきます、お義父さん」

「だから君の父親になった覚えは──!」

「はいはい、そこまでにしておかないとパパラッチにすっぱ抜かれるわよ」


やはり怒りだしてしまう社長を、呆れた様子の朱華さんが冗談交じりに宥めた。

社長はまだぶつぶつと文句をつけていて、大和さんはそれを笑顔でかわしている。

なんだかんだでいい雰囲気になってきているふたりを微笑ましげに眺めていると、朱華さんが膝をついたままこちらに寄ってきた。

彼女は私の手を両手で握り、若葉を思わせる生き生きとした笑みを見せる。


「ありがとう、初音さん。あなたも、お幸せにね」


心のこもった温かな声をかけられ、私も嬉しさを隠し切れない笑顔で、「はい」と頷いた。


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