ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「路子さんと別れてから東京に出て、彼女を忘れようと必死に働いた。会社を立ち上げて、起動に乗せて……。そうしているうちに出会ったのが、私の妻、朝羽のお祖母さんだ」


相変わらず無表情の朝羽さんだけれど、その瞳は穏やかな色を湛えて、お祖父様を捉えていた。


「妻もとてもよくできた女性で、私を心から慕ってくれた。そんな妻に惹かれていくたび、複雑な心境にもなったよ。自分だけが幸せになっているんじゃないかと……」


徐々に目を伏せる彼の気持ちは、十分にわかった。

お祖父様は、万が一祖母の結婚生活がうまくいっていなかったとしたら……と心配し、満たされている自分に罪悪感を抱いていたのかもしれない。

それは杞憂なのだと教えてあげたくて、私は手にしていた日記をお祖父様に差し出す。


「こちらをご覧になってください」

「これは?」

「祖母の日記です。お祖父様に差し上げます」


目を丸くしてそれを受け取った彼は、興味深げにページをめくり始めた。


「祖母も、最期まで祖父と仲睦まじく暮らして生涯を終えました」


私がそう伝える間も、真剣な眼差しで文字を追っていた彼は、しばらくしてゆっくり顔を上げる。

その表情は、切なさを滲ませつつも、心の底から安堵した様子で。

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