ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「そうか……路子さんも、幸せに生きられたんだな。よかった、本当に……」


波にたゆたうように、うっすら滲む涙で瞳を揺らす彼を見て、私も目頭が熱くなった。

皆、大切な人の幸せを願いながら生きている。その姿がたとえ愚かだったり、滑稽だったりしても、自分以外の誰かの幸福を願えること自体は素晴らしいことだ。

日記をそっと閉じたお祖父様は、私たちに控えめな笑みを向ける。


「君たちが見合いをすることになったと聞いたとき、神様に感謝したよ。息子が仕事で飛高さんの世話になったと聞いたときから数奇な運命だと思っていたが、最後にこんなプレゼントが残されていたとは」


お義母様が、『お義父さんね、あなたたちのことを報告したとき、ものすごく喜んでたのよ』と言っていたことを思い出す。

私に祖母を、朝羽さんに自分を重ねて、遠い昔に慕情を抱いていたのだろう。


「君たちには、本当に幸せになってもらいたい」


お祖父様が切実そうに言うと、朝羽さんは彼と合わせた視線を逸らさずに、頼もしい笑みを見せる。


「心配はいりません。私は一生、全力で彼女を守り、愛し抜きます」


まるで結婚式の誓いの言葉のように力強く宣言してくれて、私は胸をときめかせると共に、同じく彼を愛すことを誓った。

お祖父様と、天国にいる祖母のためにも。


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