ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
どうやら、うちのお酒を気に入ってくれて、純粋にレストランを楽しみにしてのことらしい。

食事会の日、朝羽さんが私に日本酒を買ってこさせたのは、ここまで見越していたからでは……なんて思ったりもするけれど、まさかね。

そんなこんなで、大変だが充実した毎日を送っているというわけだ。

これからの式も粗相があってはいけない。緊張した面持ちの自分を見つめて気を落ち着かせていると、背後に黒い袴を着た人がゆっくり近づいてくる。


「“息を呑むほど美しい”とはこういうことを言うんだな。目が離せない」


私が座る椅子に手をかけ、鏡越しに覗き込む朝羽さんは、こちらが照れてしまうセリフを真顔でさらりと放つ。

自分こそ、紋付袴姿がどれだけカッコいいかを自覚してほしい。今日しか見られないこの凛々しい姿に、私の胸はときめきの嵐なのだから。


「褒めすぎですよ。朝羽さんこそ、映画から抜け出してきた俳優さんみたいで、隣に並ぶのが恐れ多いです」

「褒めすぎだ」


お互いに歯が浮くようなことを言っているのがおかしくて、私は一時だけ緊張を解いて笑った。

彼を振り仰ぎ、直接視線を絡めれば、愛おしい旦那様が甘く微笑む。

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