ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
あぁそうか、仕事するのに都合がいいから一緒に暮らそう、ということね。甘い意味なんてあるわけがないのに、少しときめいてしまった自分が恥ずかしい。

入籍も、しきたり通り結婚式と同じタイミングですることになっている。予定だと約半年後だ。

結婚したら東京に行くつもりでいたから、それが半年早まるだけで、特に問題はない。……ただ、家族と離れる寂しさが急激に募るだけ。

でも、結婚の目的はこの飛高酒蔵の経営を立て直すこと。そのためなら寂しさも我慢できる。


「わかりました。同棲しましょう」


身体ごときちんと朝羽さんに向き直り、承諾した。それなのに、彼はなぜか考え込むように顎に手を当てる。

どうしたのかと小首を傾げると、鳥のさえずりと共にこんな呟きが聞こえてきた。


「……いっそのこと、事実婚にしましょうか」

「へ、事実婚?」


思わぬ提案に、間抜けな声を出してしまった。

事実婚って、婚姻届を出していない夫婦のことよね? そういえば、同棲と事実婚ってなにが違うんだろう。

ぽかんとする私に、片手をポケットに入れた朝羽さんは、自身の考えを話してくれる。

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