ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「指輪、定番のデザインのほうがよかったですか?」


突拍子もない問いかけに一瞬キョトンとするも、すぐに思い出した。

結納の儀式で婚約指輪を渡されたとき、朝羽さんのお母様が『あら、ソリティアじゃないのね』と、ちょっぴり不服そうにしていたことを。

ソリティアというのは、どうやら大きなダイヤモンドが一粒セットされた、ザ・婚約指輪という感じのデザインのものらしい。

彼がひとりで選んできたという指輪は、ダイヤモンドがリングと同じ高さにセッティングされた、カジュアルなデザインのもの。

これだってダイヤは存在感があるし、流れるような曲線のあるアームもおしゃれで可愛らしい。

なにより彼が私のために選んでくれたのだ、文句などあるわけがない。


「いえそんな、十分です! 朝羽さんからいただいた初めてのプレゼントですもん。宝物です」


皆に『つけてみせて』と言われてから、薬指に輝いているそれを私も見つめ、右手で包み込むようにそっと触れる。

愛しているからこその証ではなくても、こんなに素敵な贈り物をもらったら純粋に嬉しい。

私は自然と唇を弓なりにして、笑みを浮かべていた。

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