ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
さわさわと葉擦れの音がする中、しばし佇んでいたとき、私は大事なことを思い出してぱっと顔を上げた。


「あ、私からもお渡ししたいものが……!」


キョトンとする朝羽さんに少しだけ待っていてもらうように言い、小股で急いで家の裏口に向かう。入ってすぐのキッチンから、用意していた長方形の箱を取り、また庭に戻った。

春を待ちわびているような梅の木を、ポケットに手を入れて眺めている立ち姿も絵になる彼のもとに近づき、丁寧にラッピングした箱を差し出す。


「一日過ぎちゃいましたけど、バレンタインのチョコです。酒粕を入れたトリュフを作ってみました」


実は昨日がバレンタインだったため、せっかくだから朝羽さんにも渡そうと思い作ったのだ。

日本酒を作る際にできる副産物の酒粕と、日本酒そのものも入れているため、芳醇な香りが楽しめる大人のチョコレートに仕上がっている。

きっと職場でたくさんもらっているに違いないけれど、こういう行事にはやっぱり便乗したくなってしまうのが乙女心というもの。

父と兄以外にあげるのは初めてのため、ドキドキしながら彼の反応を窺う。

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