ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
クールな表情のまま、こちらがキュンとするようなことを淡々と口にする彼に、温かい気持ちと笑いがじわじわと込み上げてくる。

朝羽さんって、面白いかも。素っ気なくて冷徹っぽいかと思えば、無自覚に甘い言葉を放ったりして。

だんだん彼の人となりが見えてきたことと、私を特別に思ってくれているらしきことがなんだか嬉しくて、口元に軽く指先を当ててふふっと笑いをこぼした。


「これは義理じゃないですよ。朝羽さんは婚約者ですからね」


にこりと笑ってそう伝えると、視線を合わせた彼の表情も穏やかにほころぶ。

わずかに口角を上げた唇で「ありがとう」と言われ、私の心は軽やかに弾んだ。

少しだけ花開いた蕾を思わせる魅力的な彼の微笑みが、ひと足早く、ぽかぽかとした麗らかな春を呼んでくれたようだった。


 * * *


そのあとも、チョコレートにはどんな日本酒が合うのかという話をして、ほのぼのとしたひとときを過ごした。

少し酔いが回った頭でぼんやり思い返しながら話すと、店番そっちのけで聞いていた真琴が、珍しく眉を八の字にして嘆く。


「じゃあ、すぐ東京行っちゃうってこと? なにそれ、急激に寂しくなるじゃん」

「うん、私も」

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