ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
現実味がない不思議な感覚を抱きつつ用紙をバッグにしまうと、朝羽さんが腕時計に目を落として言う。


「次は服を買うんでしたね。表参道にでも行きましょうか」


表参道!? すごい、これぞ東京って感じ!

おしゃれな響きの地名がさらっと出てきたことにちょっぴり感動して、目を輝かせる私は、「はい!」と元気に返事をした。

とは言え、買おうと思っているのは普段着ではなく、働くときのもの。

ホテルのショップには決まった制服はなく、腰に巻くタイプのエプロンが指定されているだけ。

その下に着るのはシャツやスラックスなどがベストだと朝羽さんから聞き、買い揃えることにしたのだ。

職場への挨拶は、引っ越し作業が一段落つくだろう明後日にする予定になっている。

すでに朝羽さんから結婚するという報告はしてあるというが、皆さんは私に対してどんな反応をするだろうか。

夫婦といえ、お見合いをしたあのとき以来手すら繋いでいないし、まずお互い敬語だし、私たちの間には明らかに違和感がある。

昨日から同じ部屋で過ごし始め、夜はどうするのか緊張しまくっていたものの、結局別々の部屋で寝ることになったし……。

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