ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
その場に屈み、紐を結び直して立ち上がると、朝羽さんの姿がないことに気づいて、「あれっ」と声を漏らす。

しかし見失ったのは一瞬で、少し先を歩く彼のすらりとした後ろ姿を見つけた。どうやら私が遅れていることに気づいていない様子だ。

いけない、人が多い都会じゃすぐ迷子になっちゃう。私、ただでさえトロいんだから。

急いであとを追いかけようとした、そのとき。


「どうかしましたか?」

「さっきからキョロキョロしてるけど、ひとり?」


突然、両脇からふたりの男の人に話しかけられ、ギョッとして足を止めた。

び、びっくりした……。歳は私と同じくらいか大学生っぽいけど、なんだろう。なにかの勧誘?

今は話している場合じゃないんですよ~という心情をぎこちない笑みで表し、首を横に振る。


「あっ、いえ、ちょっとはぐれただけで……」

「俺たちも探してあげますよ。一緒にいたのは友達? どんな子?」


ニコニコとうさん臭そうな笑顔を浮かべて行く手を阻むふたりは、私をそちらのペースに乗せようとしていることがわかる。

おいおい、馴れ馴れしいな。というか、探すもなにもすぐそこにいるし! これってもしや、勧誘じゃなくてナンパ?

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