ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
微妙な顔で彼らを見送っていると、スッと腕が離されてぬくもりが消えていく。私を見下ろす朝羽さんは、相変わらずの無表情だ。


「ついてきているかと思ったらいないので、どうしたかと」

「すみません! 靴紐が解けちゃって結んでたら……」


言いようのない気まずさを感じつつ肩をすくめて謝る私に、彼は小さく首を横に振る。


「いや、こちらこそ。気が利きませんでしたね」


そう言うや否や、今度は手の平がぬくもりに包まれた。お見合い以来の、頼もしい大きな手のぬくもりに。

そこから、また身体中にじわじわと熱が広がっていく。

……嬉しい。ただ手を繋いだだけで、どうしてこんなに温かい気持ちが込み上げてくるんだろう。

歩幅を合わせてゆっくり歩き始める彼についていきながら、私は口元が緩んでしまうのを堪えきれずに、正直なひとことを呟く。


「手を繋げたので、結果オーライです」


さっきまで、彼と歩み寄れるかどうかと不安に思っていたくせに。

ただのハプニングで、またはぐれないように繋いでくれているだけなのに、触れ合えただけでその不安が薄れていくのだから、私って単純だ。

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