ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
すると、私に目線を向けた朝羽さんがあっけらかんと問いかける。


「繋ぎたかったんですか?」

「っ、それは、まぁ……」


甘い願望を持ってしまうのは仕方ないでしょう、ふたりの初めてのデートですから。

と、具体的に口にするのはなんだかためらい、私は俯いて言葉を濁した。

確認されると、欲求不満な自分をさらけ出されるみたいで恥ずかしい。自分から切り出しておいてナンだけど、そこは触れないでおいていただきたい。

朝羽さんのお母様が言っていたように彼が鈍いなら、この面倒な女心は理解してもらえないよなぁ……と思って苦笑していると、意外なひとことが返ってくる。


「そうか、遠慮していて損しました」

「……えっ」


遠慮していた? もしかして、本当は繋ごうとしてくれていたの?

ぱっと顔を上げて彼を見やるも、変わらない表情から真意を読み取ることはできず、もう一度聞くこともなんとなくできなくて、曖昧なまま終わってしまった。

もしも、朝羽さんも私との距離を縮めようとしてくれているのだとしたら、嬉しいな。

もどかしさを感じつつも、繋いだ手に少しだけ力を込めて、身体だけでも近づこうと控えめに寄り添った。


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