ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「初音さんはどんな服が好みですか?」

「私ですか? そうだなぁ……」


朝羽さんの好みもあとで教えてもらおうと思いながら商品を見回し、なんとなく心惹かれる服を手に取ってみた。

この花柄のロングワンピース、着るだけで大人っぽくなれそう。似合うかどうかは別として。


「こういうのとかいいですね。春らしいワンピースって持っていないので」


……って、高っ!

ワンピースを掲げ、ひらりと揺れる値札を思わず二度見してしまった。一万円でも私には手が出せないのに、このお値段はその倍を軽く超えている。

そりゃあそうだよね、ブランド物だもの……と、そっとポールに戻そうとしたときだ。


「じゃあ、着てみてください」

「へっ?」


予想外のひとことが投げかけられ、私は間抜けな声を漏らして固まった。

着てみてって、朝羽さんの服を買うためにここへ来たんじゃなかったの!?

戸惑っている間にも彼はスタッフを呼んでいて、にこやかな女性がやってくる。私は挙動不審なまま、彼女に「どうぞこちらへ」とフィッティングルームへと促されてしまった。

これはもう着るしかないじゃない。こんなお高い服、持っているだけで緊張するのに!

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