ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
主な調理機器や調味料がそろっていて、普段から料理をしていることがわかるシステムキッチンをお借りして作ったのは、肉じゃがのほかにも炊き込みご飯やおひたしなど、定番の和食メニュー。

時々自炊しているという朝羽さんがどんな反応をしてくれるか不安だったけれど、穏やかな表情で「私が好きな味です。とても美味しい」と言ってくれて。

残さず綺麗に食べてくれた食器を見て、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。


……が、安堵していられるのは、ここまでだ。お風呂に入ったら、同じベッドで過ごす初めての夜がやってくる。

自分から言い出したというのに、いざとなると緊張しまくって胸が詰まりそう。

そのせいもあって、ひとりだと十分すぎる広さの浴槽に身体を沈めたら異常なほど心臓がバクバクしてしまい、すぐに湯船から上がった。

快適で優雅なバスタイムを過ごせるはずが、まったくリラックスできず。白を基調とした上質なホテルライクの洗面所で髪を乾かしている間も、曇りのない鏡には固い表情の自分が映っていた。


「はぁ……日本酒持ってくるんだった」


寝る準備を整え、今お風呂に入っている朝羽さんを待とうとリビングのソファに腰を下ろした私は、ため息を漏らしてひとりごちた。

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