ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
家を出るときに、しろちゃんが『俺の変わりだと思ってこれを持ってけ!』と、日本酒の一升瓶を持たせようとしていたのだけど、重いし、欲しくなったら職場で買えるからと断ったのだった。

お酒の力を借りれば、あれこれ考えずにベッドに潜り込めたかもしれないな。

でもなんだかんだで、朝羽さんと夫婦らしいことをして近づきたい気持ちは変わらない。

ベッドの中で寝返りを打って触れ合っちゃったら……とか、ブサイクな寝顔を見られて幻滅されたら……とか、そういうのも承知で提案したんだから腹を括るのよ、初音!

膝の上で頬杖をついて言い聞かせていた最中、突然私の視界にひょいっと無表情の綺麗なお顔が入り込んできて、ビクッと肩が跳ねた。

うわ、朝羽さんお風呂上がってたんだ!

小首を傾げて前屈みになり、私と目線を合わせる仕草は可愛らしいのに、しっとりと濡れた髪が目にかかった姿は色っぽさが倍増している。

さらに、同じシャンプーの香りがふわりと漂ってくるものだから、再び心拍数が上昇し始める。


「まだ眠れそうにないですか?」


タオルで髪を拭いながら問いかける彼に、ピンと背筋を伸ばした私はぷるぷると首を横に振る。

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