ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「いえ、大丈夫です! ちょっと、その、緊張してるだけで」


へらりと笑って正直に告白すると、朝羽さんは屈んでいた上体を起こし、なにかを思案するように顎に手を当てた。

しばらくして、ボソッと独り言を呟く。


「……俺が敬語だから、他人行儀な感じがして緊張するのか」

「へ?」


彼なりの考察を聞いた私は、気の抜けた声を漏らしてしまった。

いやぁ、私が緊張しているのは敬語は関係なくて、あなたが魅力的だからなんですが……。

とは言えずに、ただぽかんとしていると、朝羽さんは表情を変えずに淡々と続ける。


「すみません、ホテルにいるときの癖でつい。でもそうだな、もう夫婦なんだし……」


ちら、とこちらに流し目を向けられてピクリと反応した直後、ソファに座ったままの私のすぐそばに彼がやってくる。

そして、手を差し出しながら、優しげな眼差しで私を見つめてひとこと放つ。


「おいで、初音」


っ、うわ……なんだか声の響きも、微笑んでいるわけでもないのに表情も甘く感じて、すごくドキドキする。

敬語が取れたことと、不意打ちの名前の呼び捨てには、心臓を射抜かれるような威力があった。


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