ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
そんな彼がしっかりと目覚めるのは、朝食を終えて身支度を整える頃。

洗面所からリビングに戻ってくると、ぼーっとした彼はどこへやら、まるで変身してきたかのようにキリッとしたビジネスモードになっているから、私はそのたびキュンとしている。

毛先がぴょんぴょん跳ねていた長めの前髪は、煩わしくないよう横に流されていて、ワイシャツの袖口のボタンを留める姿もとてもカッコいい。


しかし、先ほどとは打って変わって凛々しい表情で準備をする彼を、のんびり眺めているわけにはいかない。

これから私も新しい職場に挨拶をしに行くからだ。アドバイザーとして本格的に働くのは明日からで、今日は飛高酒蔵の商品を並べる作業を手伝うことになっている。

洗面所でセミロングの髪をざっくりとひとつに束ねる私の隣で、朝羽さんがネクタイを結びながら声をかけてくれる。


「ショップのスタッフは皆気がいいから、安心して働けると思う。とりあえず雰囲気を掴んでおいで」

「はい。頑張ります!」


気合を入れて小さくガッツポーズをすると、彼はわずかに口角を上げて頷いた。

その直後、なにかを思い出したように、「そういえば」と話し始める。

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