ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
そうこうしているうちに時間が迫り、朝羽さんが買ってくれたシャツとスラックスを入れたバッグを持ち、彼と一緒に部屋を出る。

今日は九時出勤の朝羽さんに合わせているけれど、ショップスタッフはシフト制で、早番は七時半、遅番は十二時出勤だそう。

こうやって一緒に出勤できるのは稀なんだなと思いながら、彼と肩を並べてまだ寒々しい並木道を歩いた。


朝羽さんが総支配人を務める“ホテルベアティチュード東京”は、マンションから徒歩十分の場所にある。

十年前に開業した比較的新しいホテルでありながら、格付け機関において五つ星を獲得しており、世界的にも業界的にも評価が高い。

交通の便も良く、地上二十四階建ての客室からは絶景が望め、レストランも名高いという、最高級のラグジュアリーホテルなのだ。

外観はシックなオフィスビルといった感じ。

エントランスには、昔の外国車のようなベアティチュード仕様のホテルカーが停まっていて、レトロな雰囲気を醸し出している。

朝羽さんに続いてドアマンに挨拶をして、一歩中に入れば都会の喧騒を忘れるほど静寂な空間が広がる。

豪華さの中に和のデザインも取り入れられているらしいアトリウムロビーは、ひと足早く桜の装飾で華やかに彩られていて、思わず感嘆の声を上げてしまった。

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