ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
かく言う私も、自然な笑顔を作ることができていない。初めが肝心なのだから、愛想良くしなければいけないのに。

私はマイペースな人間で、おおらかな性格だと自負している。キレたり、取り乱したりもしないし、あまりはしゃぐこともない。

両親から礼儀作法を叩き込まれたせいかはわからないが、昔からよく『落ち着きがある子だね』と言われていた。

でも、だからって心の中まで落ち着き払っているわけではない。人並みに喜ぶし、怒るし、緊張もする。

モデルのように麗しい男性を目の前にしている今もそう。

身のこなしはぎこちなくならずに振る舞えていても、心臓はだいぶ速いスピードで動いているし、顔の筋肉は強張ってしまっているのだ。

それでも、彼のご両親である霞浦代表と奥様は、にこやかにこんなことを言ってくれる。


「初音さんにお会いできて嬉しいわ。とっても可愛らしいお嬢さんね」

「あぁ。写真を拝見したときからそう思っていたよ」

「もったいないお言葉を……ありがとうございます」


こちらもただならぬ貫禄とオーラを放つふたりに、私はもう一度礼をする。

お世辞だとわかっていてもやはり照れてしまい、おかげで口元が少し緩んだ。

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